ご家族の皆さまへ


用語集

A

ADL
「日常生活動作」と訳され、ADLはActivity of Daily Livingの略。普段の生活において不可欠な基本的行動(食事、排泄、入浴、移動、更衣)を指す。

M

MSA
多系統萎縮症のことで、MSAとはMultiple System Atrophyの略。解説は、「多系統萎縮症(MSA)」の項目を参照。

Q

QOL
「生活の質」などと訳され、QOLはQuality Of Lifeの略。どれだけ人間らしく、望んだ通りの満足な生活を送ることができるかの尺度。

S

SCD
脊髄小脳変性症のことで、SCDとはSpinocerebeller Degenerationの略。解説は、「脊髄小脳変性症(SCD)」の項目を参照。

アプラタキシン欠損症
日本の常染色体劣性遺伝性SCDのなかで、最も頻度が高い。幼少時(2〜6歳)からみられる運動失調や眼球運動の失行(動かし方を知っているのに動かすことができない状態)が特徴的な症状で、20〜30歳代で末梢神経障害、低アルブミン血症、高コレステロール血症などが現れる。

遺伝性SCD
遺伝性で発病し、脊髄小脳変性症(SCD)の30〜40%を占める。遺伝形式により、常染色体優性遺伝性と常染色体劣性遺伝性とに、大きく分類される。

運動失調
筋力の低下や身体のマヒが認められないのに、自身の意思でスムーズに運動ができなくなる状態。協調運動(さまざまな筋肉が調和して働き、スムーズに動くこと)や、身体の平衡が障害される。全身性疾患や神経疾患により、小脳や脊髄の障害を生じることが大きく関わる。

オリーブ橋小脳萎縮症
孤発性SCDのひとつ。小脳症状である運動失調が強く、次第にパーキンソン症状や自律神経症状を併発することが多い。かつて独立した病型として報告されたが、現在は多系統萎縮症(MSA)のMSA-Cに分類される。

甲状腺
のどぼとけの下部の気管前面に位置する内分泌器官。右葉ならびに左葉、それらをつなぐ峡部から構成される。
全身の代謝を調節する甲状腺ホルモンを分泌する。
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)
TRHとは、Thyrotropin-Releasing Hormoneの略。視床下部から放出され、下垂体からの甲状腺刺激ホルモンの分泌を調節している。甲状腺刺激ホルモンは甲状腺に作用して甲状腺ホルモンの分泌を促し、甲状腺ホルモンは身体の代謝を活性化させる作用をもつ。
孤発性SCD
非遺伝性で発病し、脊髄小脳変性症(SCD)の60〜70%を占める。障害された神経系により、皮質性小脳萎縮症とSCDで最も多い頻度でみられる多系統萎縮症(MSA)とに、大きく分類される。

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症
常染色体優性遺伝性SCDのひとつで、世代が経つにつれて発病年齢が低下する。30歳未満ではてんかんや精神発達障害や認知症、運動失調が主な症状で、40歳以上の発病では運動失調や認知症のほか、性格変化などがみられる。眼球運動の異常や筋肉の萎縮、感覚障害などはほぼない。
シャイ・ドレーガー症候群
孤発性SCDのひとつ。自律神経症状が強く、排尿障害や便秘、立ちくらみ、睡眠中のいびきや無呼吸などがみられる。かつては独立した病型であったが、現在は多系統萎縮症(MSA)に含まれる。
シャルルヴォア-サグネ型痙性失調症
カナダのシャルルヴォア・サグネ地方に伝わる神経変性疾患として知られ、現在は日本も含め世界各地で報告される。幼少時の歩き始めが遅くてふらつく、会話の障害、眼球のふるえ、手足の変形や硬直などが主な症状。
常染色体優性遺伝
常染色体とは性別に関係しない染色体で、優性遺伝とは片親のみに認める形質(異常など)でも遺伝することを指す。つまり、性別に関係なく、片親のみがもつ形質でも遺伝することを意味する。
小脳
大脳の後下部分にあり、脳すべての重量のおよそ10%を占める。主な機能は、全体身体の平衡運動の調節・制御、眼球運動などの統合。そのため、小脳に何らかのトラブルが生じると、運動機能や平衡感覚に異常をきたす。
小脳症状
小脳の障害による運動失調などの症状。具体的には歩行時のふらつき、ろれつが回らない、手の指がうまく使えなくなるなどの症状が該当する。
常染色体劣性遺伝
常染色体とは性別に関係しない染色体で、劣性遺伝とは両親ともに認める形質(異常など)でなければ遺伝しないことを指す。つまり、性別は関係しないが、両親とも同じ形質をもつ場合だけに遺伝することを意味する。
自律神経症状
自律神経の異常により現れる症状で、SCD・MSAでは、排尿障害・排便障害、たちくらみ、睡眠中のいびきや無呼吸、発汗障害などがみられる。

脊髄
脊椎(背骨のこと)の中にある索状の神経組織。脳と脊髄をあわせて、中枢神経と呼ぶ。身体の各部分と脳の間を結ぶ、感覚や運動に関わる神経が通っている。また、反射機能の中枢でもある。
脊髄小脳失調症1型(SCA1)
常染色体優性遺伝性SCDのひとつ。SCAは、脊髄小脳失調症の英名の別称Spinocerebellar Ataxiaの略。発病年齢は幅が広く、小脳症状で始まり、進行すると眼球運動の異常や筋肉の萎縮を認める。
脊髄小脳失調症2型(SCA2)
常染色体優性遺伝性SCDのひとつ。SCAは、Spinocerebellar Ataxiaの略。発病年齢は幅が広く、小脳症状で始まり、腱反射の低下や眼球運動が遅くなるなどの症状を認める。進行すると、自発性低下などもみられる。
脊髄小脳失調症3型(SCA3、マシャド・ジョセフ病)
常染色体優性遺伝性SCDのひとつ。SCAは、Spinocerebellar Ataxiaの略。マシャド・ジョセフ病とも呼ばれる。眼球のふるえや筋肉の萎縮などがみられ、後期には感覚障害や自律神経症状をみることもある。
脊髄小脳変性症(SCD)
運動失調を主な症状とする神経疾患の総称で、SCDとはSpinocerebeller Degenerationの略。小脳をはじめ脳幹や脊髄にかけての神経細胞が徐々に破壊され、非常にゆっくりと症状が進む。いろいろなタイプがあり、病型が細かく分類される。また、治療が極めて難しく、厚生労働省により特定疾患として認定されている。
セナタキシン欠損症
常染色体劣性遺伝性SCDのひとつで、10〜20歳前後からみられる運動失調や眼球運動の失行(動かし方を知っているのに動かすことができない状態)が、特徴的な症状。
線条体黒質変性症
孤発性SCDのひとつ。手足の固縮などのパーキンソン症状が強い。かつて独立した病型として報告されたが、現在は多系統萎縮症(MSA)のMSA-Pに分類される。

多系統萎縮症(MSA)
MSAとはMultiple System Atrophyの略。脊髄小脳変性症の1種で、最も高い頻度でみられる。孤発性(非遺伝性)がほとんどで、自律神経症状と運動障害(パーキンソン症状、小脳障害)がともにみられる。運動障害の種類によって、パーキンソン症状が強いMSA-Pと小脳症状が強いMSA-Cに病型が分類される。

特定疾患
いわゆる難病のうち、厚生労働省による難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究の対象に指定された疾患。そのなかでも、診断基準は確立しているが難治度・重症度が高く、患者数が比較的少ないという理由から、公費負担でなければ原因究明・治療法確立が困難な疾患は、医療費自己負担の軽減による対策が立てられている。SCD・MSAは、公費負担の対象として指定されている。

脳幹
脳のうち、大脳と小脳を除いた部分(間脳、中脳、橋、延髄)を指す。呼吸や血液循環、意識など生命維持に欠かせない機能の中枢で、咀嚼や嚥下運動も司っている。

パーキンソン症状
動作が緩慢になる、手足がふるえ・硬直、表情が乏しくなる、姿勢のバランスが崩れるなどの症状が該当する。
廃用症候群
過度な安静(寝たきりなど)や活動の低下により、心身が衰えてしまう状態。筋力の低下、関節の硬化、起立時のめまい、床ずれ、骨の脆弱化、心肺機能の低下、認知症・抑うつなどの症状が現れる。

皮質性小脳萎縮症
孤発性SCDのうち、多系統萎縮症(MSA)以外のものをさす。小脳の皮質が主に変性し、小脳症状である運動失調がみられる。
ビタミンE単独欠乏性失調症
常染色体劣性遺伝性SCDだが孤発性もみられ、発病年齢は幅広い。運動失調や感覚障害が主な症状で、ほかに会話の障害や頭部のふるえなども多い。血液中のビタミンEの欠乏を認める。

フリードライヒ失調症
常染色体劣性遺伝性SCDのひとつで、20歳以下での発病が多い。下半身の感覚性失調症が主な症状で、腱反射はなくなることが多い。また、会話や知能の障害、心筋症、足の変形、背骨の歪みなども多くみられる。欧米では最も多い遺伝性SCDであるが、日本人には存在しない。

マシャド・ジョセフ病
脊髄小脳失調症3型(SCA3型)の項目を参照。

監修:国立精神・神経医療研究センター 理事長・総長 水澤英洋先生