在宅医療アドバイス


専門職種各エキスパートからのアドバイス

在宅療養を共に支えるケアマネジャーの役割

世田谷区新代田あんしんすこやかセンター 
社会福祉法人 正吉福祉会  岡戸 有子様

日本社会事業大学社会福祉学部児童福祉学科卒業。
1987年東京都日野保健所「多摩永山保険相談所」勤務。以降、都立神経病院在宅療養支援室、調布保健所等の勤務を経て2009年、東京都退職。訪問看護ステーションでの訪問看護経験を経て2012年、世田谷区新代田地域包括支援センター勤務。現在に至る。


確定診断を受けたら相談しましょう

SCD・MSAと診断されたら、「難病医療費助成」申請をすると同時に、お住まいの地区の保健所か、65才以上の方は「地域包括支援センター」にご相談に行くことをお勧めします。

「地域包括支援センター」は保健師(看護師)、社会福祉士、ケアマネジャーで構成される専門家集団です。相談者の不安や疑問を共に整理し、解決のためのお手伝いをします。「地域包括支援センター」は65才以上の高齢者の総合相談窓口ですが、SCD・MSAは国が特別に指定した疾病なので、40才以上であれば介護保険を申請する場合に相談ができます。


介護保険を申請しましょう

介護保険サービスを利用する場合は、介護保険申請をして、認定を受ける必要があります。診断が確定したら初期であっても介護保険の申請をしましょう。(万一認定が「非該当」となっても住所地の自治体が独自に行っているサービスを受けることも可能です)
介護保険申請はお住まいの地区の「地域包括支援センター」または市区町村の担当部署で行うことができます(申請には、マイナンバー個人番号カードなど、本人確認ができる書類が必要になります。申請前に窓口にご確認ください)

認定が決定したらケアマネジャーと相談して必要なサービスを利用することができます。


介護保険を巡る動向

平成27年の介護保険法改正に伴い、介護保険サービスの「予防訪問介護(ホームヘルパー)」「予防通所介護(デイサービス)」が要支援1・要支援2のサービスから除外されることになりました。同時に各自治体で「介護予防・日常生活支総合事業」という事業が開始され、これまでの介護保険サービスから速やかに移行することが求められています。

平成29年3月末までにすべての自治体で移行が完了します。また、要介護1程度の軽度者に対する生活支援サービスの一部(買物・調理)等の除外の検討されるなど、介護保険を巡る状況は不安定です。折々の介護保険情報に注意して利用できるサービスを選択できるようにしておくと良いと思います。


ケアマネジャーってどこにいるのでしょう

介護保険の認定が出たら、要支援か要介護かによって、ケアマネジャーの所属場所が異なります(下図参照)。
要支援の場合は住所地の「地域包括支援センター」に相談してください。

要介護の場合は自身でケアマネジャーを選択して契約を結ぶことになりますが、地域包括支援センターに相談して一緒にケアマネジャーを選定することもできます。


介護保険サービスを利用して在宅療養を続けましょう

転びやすい・疲れやすいなどの初期症状がある場合は、介護予防支援(日常生活支援総合事業等)を利用することで、転倒の予防や症状の進行を緩やかにする事が可能です。また、できるだけ適切な運動をして筋力の低下を予防しましょう。
例えば、SCDの初期で歩行がやや不安定なときに、一人で買物に行って転倒・骨折し、その結果症状が悪化するなどということがありますが、介護保険や日常生活支援総合事業を利用して買物同行のサービスを受けて重いものを持ってもらったり、歩行の介助をしてもらうことで転倒を予防することができます。
症状が進んだ場合は、より多くのサービスを利用して介護を受けることができます。
ムセる・転倒しやすくなる・声が小さくなる・いびきをかくようになる・朝、頭が痛いなど、少しでも、今までと違う症状に気づいたときは医師に連絡することが必要ですが、うまく伝えられないと思ったときはケアマネジャーに相談してみてください。

今後出現する可能性のある、排泄や言語の障害、呼吸障害などを念頭に入れて、支援チームを組んでもらいましょう。

上図のように、利用するサービスによって保険の種類が違いますが、両方を組み合わせて必要な支援ができるようにします。SCD・MSAは訪問看護や訪問リハビリを介護保険の枠から外れて医療保険で利用することができます。

例えば「ふらつき・歩行障害」などの症状があるときは、医師の訪問による診療、訪問看護師による状態観察、ヘルパーによる買物や家事支援・入浴のお手伝い、住宅改修による手すりの設置や段差解消などのように、多種のサービスを組み合わせてケアプランを立てます。


日常的な相談もできます

ケアマネジャーは月に1回以上、必ず訪問か電話で療養者の様子やサービス内容の確認を行うことになっています。

介護保険以外のことでも、さまざまな心配事についても、ケアマネジャーに相談してみてください。ケアマネジャーは万能ではありませんが、解決のためにはどうしたら良いか一緒に考えて患者さんを支えます。ケアマネジャーには守秘義務がありますから、本人の了解無しに相談内容が外部に漏れることはありません。安心して相談しましょう。

(原稿執筆 2016年7月)